マンションやアパートが建たないと思っていた場所に2、3階建ての集合住宅が出現する――。

 東京都内の住宅街でそんな事例が相次ぎ、周辺住民とトラブルにつながるケースも出始めている。こうした建物は、実はマンションなどの「共同住宅」とは異なる「重層長屋」で、建築規制の適用を除外されているためだが、専門家からは「マンションなどと構造上は大差なく、規制の検討も必要では」と指摘する声も上がっている。

 ◇2階建てでも「長屋」

 「マンションやアパートは、建てられないと聞いていたのに……」。今年4月、世田谷区奥沢の女性(49)は、あいさつに来た開発業者から「隣の土地で、近く建設の工事に入ります」と言われて驚いた。建設されるのは、14世帯が入居する木造2階建て集合住宅。高さは制限ぎりぎりの約10メートルだという。

 土地の形状から、都建築安全条例で共同住宅が建てられないはずだが、この建物は、構造上、「長屋」扱い。マンションやアパートなどの「共同住宅」と異なるため、条例の規制対象外だった。

 女性らは区建築審査会に、建物の建築確認の取り消しを請求した。しかし、同審査会は先月、「取り消す理由は認められない」と請求を棄却した。女性は「14世帯も入居するのに『共同住宅』じゃないなんて」と納得していない。

 ◇条例も想定外

 なぜ都の条例では、重層長屋とマンションなどで規制が異なるのか。都建築企画課によると、条例が制定されたのは1950年。「長屋といえば平屋が中心の時代。複雑な階層構造を持つ現在の形は想定されていなかった」という。

 一方、階段を使って大勢の住民が一斉避難する必要があるマンションなどの共同住宅は、避難経路の確保が最優先。消火活動に支障が生じてはいけないからと、敷地形状などにも厳しい規制が課せられた。

 しかし、近年の重層長屋の場合、全戸1階に玄関があるというだけで、構造上はマンション、アパートと大差ない。重層長屋の規制について都では「新たな規制は影響が大きくなる」と慎重だ。これに対し、建築紛争に詳しい早稲田大の日置雅晴教授(行政法)は、「マンションなどとの差がなくなっている以上は、規制の対象としてもよいのでは」と指摘する。

 ◇地権者の事情も

 一戸建てばかりが並ぶ閑静な住宅街の中で、重層長屋の存在は異質なものと映るようだ。「日当たりが悪くなる」「ごみ捨てなど地域のルールが守られるか心配」など、世田谷区都市計画課には昨年から今年にかけて重層長屋を巡る相談や苦情が6件寄せられた。松村浩之課長は「突然増えたという印象」と戸惑う。

 重層長屋を手がける都内の総合不動産会社によると、長引く不況から一戸建て用では売りにくいが、集合住宅なら賃貸もでき土地の有効利用にもなるとして、地権者が重層長屋を選ぶケースが増えていると指摘する。

 都は今後、重層長屋の建築状況や近隣住民とのトラブルなどの実態調査を進め、規制の必要性について検討するとしている。(森重孝)

2011年12月28日11時47分  読売新聞)

マンションやアパートが建たないと思っていた場所に2、3階建ての集合住宅が出現する――。

 東京都内の住宅街でそんな事例が相次ぎ、周辺住民とトラブルにつながるケースも出始めている。こうした建物は、実はマンションなどの「共同住宅」とは異なる「重層長屋」で、建築規制の適用を除外されているためだが、専門家からは「マンションなどと構造上は大差なく、規制の検討も必要では」と指摘する声も上がっている。

 ◇2階建てでも「長屋」

 「マンションやアパートは、建てられないと聞いていたのに……」。今年4月、世田谷区奥沢の女性(49)は、あいさつに来た開発業者から「隣の土地で、近く建設の工事に入ります」と言われて驚いた。建設されるのは、14世帯が入居する木造2階建て集合住宅。高さは制限ぎりぎりの約10メートルだという。

 土地の形状から、都建築安全条例で共同住宅が建てられないはずだが、この建物は、構造上、「長屋」扱い。マンションやアパートなどの「共同住宅」と異なるため、条例の規制対象外だった。

 女性らは区建築審査会に、建物の建築確認の取り消しを請求した。しかし、同審査会は先月、「取り消す理由は認められない」と請求を棄却した。女性は「14世帯も入居するのに『共同住宅』じゃないなんて」と納得していない。

 ◇条例も想定外

 なぜ都の条例では、重層長屋とマンションなどで規制が異なるのか。都建築企画課によると、条例が制定されたのは1950年。「長屋といえば平屋が中心の時代。複雑な階層構造を持つ現在の形は想定されていなかった」という。

 一方、階段を使って大勢の住民が一斉避難する必要があるマンションなどの共同住宅は、避難経路の確保が最優先。消火活動に支障が生じてはいけないからと、敷地形状などにも厳しい規制が課せられた。

 しかし、近年の重層長屋の場合、全戸1階に玄関があるというだけで、構造上はマンション、アパートと大差ない。重層長屋の規制について都では「新たな規制は影響が大きくなる」と慎重だ。これに対し、建築紛争に詳しい早稲田大の日置雅晴教授(行政法)は、「マンションなどとの差がなくなっている以上は、規制の対象としてもよいのでは」と指摘する。

 ◇地権者の事情も

 一戸建てばかりが並ぶ閑静な住宅街の中で、重層長屋の存在は異質なものと映るようだ。「日当たりが悪くなる」「ごみ捨てなど地域のルールが守られるか心配」など、世田谷区都市計画課には昨年から今年にかけて重層長屋を巡る相談や苦情が6件寄せられた。松村浩之課長は「突然増えたという印象」と戸惑う。

 重層長屋を手がける都内の総合不動産会社によると、長引く不況から一戸建て用では売りにくいが、集合住宅なら賃貸もでき土地の有効利用にもなるとして、地権者が重層長屋を選ぶケースが増えていると指摘する。

 都は今後、重層長屋の建築状況や近隣住民とのトラブルなどの実態調査を進め、規制の必要性について検討するとしている。(森重孝)

2011年12月28日11時47分  読売新聞)

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